芦名くんの隠しごと
「野乃ちゃん、さっきぶりだね」
「……っ、はい。……よく、わかりましたね、私の家」
相変わらず穏やかな声。
それなのに、私にはもう“恐ろしい声”としてしか、認識されなくなっていた。
「そりゃあ、生徒会長やってるからね。ウチの生徒の住所くらい、カンタンにわかるよ」
楓さんと私は、明らかに“友達”では………ない。
少なくとも、私にとっては。
夏樹くんのことは友達だと思ってるけど、楓さんはトラウマとしての意識の方が強くて。
どうしても、イメージが壊れてくれない。
「……野乃、さっきの男の子じゃないよね?もしかして、この子が彼氏?」
本人が目の前にいるのにも関わらず、そんなことをそっと耳打ちで聞いてくるお母さん。
もう、どこにため息つけばいいのかわからない。
「……彼氏じゃないよ。それに、さっき言ったでしょ?」
私が好きなのは、芦名くんだってこと。