芦名くんの隠しごと



私が少し勇気を出してそう言ったにもかかわらず、「へーえ」なんて片側だけ口角を上げる楓さん。


「野乃ちゃん、僕が怖いくせに?」


「………っ、」


「気付いてないとでも思った?あんなに怯えられたら、気付かない方が難しいと思うけど」


ぜ、ぜんぜん隠せてなかったみたいだ。


おまけに、呆れ顔でため息までつかれてしまう。


「……そ、それでも知りたいんです!」


「怯えてるってのは否定しないんだね。いいの?そんな相手と二人っきりで」


そう言って、楓さんが(たの)しそうに表情を歪め、顔を近付けてくる。


私は思わず後ずさりそうになったけれど、グッと踏ん張って、楓さんを真っ直ぐに見つめる。


< 95 / 279 >

この作品をシェア

pagetop