加瀬くんのカノジョはもうやめる。
誰もいない教室に連れてこられた私は何も言えずにいた。
もう球技大会始まっちゃうよ?
なんて言った日にはボコボコにされるんじゃないか。
「あのさ。」
「何でしょう…」
「何その格好。」
やっぱり…
加瀬くんが怒ってる理由は、
このチアガール服だった。
「あのですね、応援チアガールに選ばれまして…」
「聞いてない」
「言ってないもん。」
絶対ダメだって言われると思って言わなかったんだよね。
「腹出すな。スカート短い。着替えろ」
「無理だよ!これしかないもん!」
全部指摘された…
加瀬くんは一歩近づき、
私の手を優しく握った。
ドキンと高鳴る胸。
これだけでドキドキしちゃうなんて私、
初心者すぎ。
「他の奴に見せたくないって分からない?」
「でも私球技できなくて…だからその代わりにって…」
加瀬くんは小さくため息をついた。
「もう少し自分が可愛いってこと自覚して。
できるだけこれ羽織って。」
そう言って加瀬くんのジャージの上着をかけられた。
「ありがとう…」
加瀬くんって不器用。
でも優しさちゃんと伝わってくるんだよね。
それに他の奴に見せたくないって…
独占欲?
どうしよう。
私これだけで、何年も生きれちゃうよ。
嬉しすぎて私は顔を隠したのだった。