海賊と宝石の歌姫
「セダさん、少しいいですか?」

不意に話しかけられ、セダは横を見る。カヤが起きていた。着物にきちんと着替えてある。その胸には、セダが直したネックレスが揺れていた。

「どうした?」

「お見せしたいものがありまして……」

カヤは微笑み、セダの手を引く。セダはカヤとともに家を出た。朝早くの村は静かだ。まるで嵐が去った直後のように……。

いよいよ出航の日だが、セダはカヤに「一緒に行こう」とは言っていない。カヤが「そばにいたい」と言ってくれたことは嬉しいが、キクの言っていた決まりがある。キクは「一緒に行ってもいい」とはカヤに言っていない。

「ここは……」

カヤに連れられてセダがやって来たのは、カヤが攫われてしまった日に来ていた城跡だった。カヤはセダの手を離し、息を吸う。


あなたの懐かしい声
私の胸に刻まれてる
遠い場所へ旅立つ日が来ても
二人、死が分かつまで


カヤが歌うと、地面がゆっくり振動していくのがわかった。ゆっくり地面が開き、地下へと続く道が現れる。セダは驚き、カヤを見つめた。
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