海賊と宝石の歌姫
「歌を忘れてしまったというのは嘘です。私は、この村の宝を守らなければならないので、嘘をついていました。ごめんなさい」

カヤは謝り、セダを中へ案内しようとする。しかし、セダは首を横に振った。

「宝はいらない。俺はそんなものはほしくない」

「いらないのですか?」

カヤは驚く。セダはカヤを抱きしめ、耳元でささやいた。

「お前さえいればいい。お前が、笑っていてくれるなら……」

カヤと次に会えるのは、何年先になるかわからない。カヤはいずれセダ以外の男性と結ばれ、子どもを産むのだろう。しかし、カヤがこの村で幸せに暮らしてくれるのならそれでいいと思った。

「セダさん、私……」

「何も言うな」

カヤの声を聞くと泣きそうになり、セダは命令する。ただカヤを抱きしめていた。

「……合格です」

突然声が聞こえ、セダは顔を上げる。いつからそこにいたのか、キクが立っていた。そしてその横にはライリーたちもいる。
< 118 / 129 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop