愛染堂市
―――――傭兵



 女が暑苦しい顔で汗をダラダラと流しながら、俺の事を睨み付ける。

―――全くやっかいだ。俺はこう言ったやっかい事が嫌いだ。

女はガキの頭を殴っただけじゃ気が済まず、怒りの矛先を俺に向けて来やがった。

俺だって好きでこんな路地裏に来て、ガキの相手をした訳じゃねえ。

俺は女に殴られ、頭を抱えてしゃがみこんでいるガキを立たせ、ガキのポケットからクールと手彫りのミッキーマウスが刻まれているジッポライターを取り出し、女に見せる。


『この辺じゃJPSは腐る程売ってやがるがコレはケープタウン辺りまで行かねえと買えねえんだよ。それにこのライターも小汚いガキに盗られて、無くしたくねえ品物なんでな・・・あんた謝られても、睨まれる筋合いは無えはずだぜ・・・キョーコさんよ』


女は顔を真っ赤にして、俺をここへ連れて来たガキをキッと睨み付ける。

ガキは青ざめた表情を見せてうつむく。


「・・・ごめんなさい・・アタシ」


女はそう言って頭を下げる。


「・・・アレ?」


女は目を大きくして俺を見つめる。


「あなた、日本人?」

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