私の中におっさん(魔王)がいる。~毛利の章~

 * * *

 凄まじい衝撃音が轟いた。
 安土の美しい町並みが、崩れ去っていた。
 町は崩壊していた。

 焼け落ちた建物の残骸が転がり、嵐に吹き飛ばされ、薙ぎ倒されたような建物が幾つもあった。
 地面はえぐれ、兵士の死体が幾つも転がっている。

 その傍で、満身創痍の兵士達が祈るような気持ちで空を見上げていた。
 その中には、翼の姿があった。
 
 翼は、腹から血を流していた。
 彼自体に外傷は見られないが、何故か体内から血が滲み出ている。
 苦痛に顔を歪める翼の上空に、シンディに騎乗した黒田が飛んで来た。

「翼。絶壊(ぜっかい)持ちこたえさせろよ。じゃないと、お前死ぬぞ」
「分かってますよ。大丈夫っす!」

 真剣な声音の黒田に、翼はわざと声の調子を上げて軽く答えて見せた。
 翼の強がりを見て、黒田はシンディを羽ばたかせる。
 その瞳には怒りが滲んでいた。
 翼は半笑いを浮かべた笑みを引っ込めた。眉間にシワを寄せる。

「隊長。無茶しちゃダメっすよ……! あんただって美章での怪我治ってないんすから!」
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