私の中におっさん(魔王)がいる。~雪村の章~
第十三章・三角関係の決着
 ゆりは、廊下の端から巨大なステンドグラスを眺めていた。
 大仰にため息をついて、ステンドグラスに突っ込むように、玄関に向って早足で歩き出す。

 玄関を睨み付けたその瞳には、鬼気迫るものがあった。
 勢い良く扉まで来ると、内側にいる門番がゆりの気迫に気圧されたようで、慌てて開門した。ゆりは、頬を膨らませたまま、一歩踏み出した。

「絶対捕まえてやる」

 * * *

 この三時間前、ゆりは自室のベッドで不貞寝していた。
 この二週間、ゆりは雪村と話せていなかった。

 それと言うのも、雪村がゆりの顔を見ると逃げ出すからだ。ゆりも最初は戸惑った。返事を決めかねていたし、挨拶するのにも何処となく抵抗感があった。だが、普通に接しようと決心し、挨拶をしようと近寄ると雪村がゆりの顔を見た途端、脱兎の如く逃走したのだ。

 それを見て、ゆりは心から呆然とした。
 だがゆりは、ちゃんと話をしよう。返事をしようと、雪村を探し回った。が、その度に雪村は、例の如く逃げ出し、行方をくらませる。

「なんなの……何がしたいのよ」
 ゆりはイラっとしながら、毛布に顔をこすり付けたが、突然勢い良く上体を起こして、毛布をベッドに叩き付けた。

「もう!」
 イライラしている原因は、雪村のせいだけではない。自分自身にも、ゆりはイラついていた。

 告白は、断ろう――そう決めていた。結の気持ちを知っていて、頷く事は出来なかった。しかし、雪村が逃げて、答えを明確に示せないことを、ゆりは心のどこかでほっとしていた。そう思う自分に、ゆりはイラつきを感じていた。

「……私って、最低」
「どうしてだ?」
「きゃあ!」
 突然湧いた声に、ゆりは驚いて悲鳴を上げた。

「な、なんでここに? いつから居たの、結」
 結はベッドのすぐ脇に、きょとんとした顔つきで立っていた。

「今さっきだ。ゆんちゃんが毛布を叩きつけてたとこくらいからだな」
「本当に?」
「うん」

 結はこくんと頷いて、ドアの方向を振り返った。

「ちょっと、良いか?」
「え、うん」

 結に促されて、ゆりはベッドから降りた。
< 95 / 148 >

この作品をシェア

pagetop