何の取り柄もない田舎の村娘に、その国の神と呼ばれる男は1秒で恋に落ちる【前編】
「なんだこの女。お前には関係ないだろ。」

月斗も星羅に対抗して、敵対心むき出しになるが、こうなってくると、りんの手には負えなくなってきてしまう。

「関係あるわよ。」
「へ?」
「だってあなたも、使教徒でしょ?星羅。」

どこからか聞こえてきたその言葉に、星羅は唇を噛みしめた。
助け船のつもりでその言葉を口にしたであろう張本人は、全く悪気がない様子で、そこに立っている。
しかし、それは星羅にとっては、余計なお世話というものだ。

「そ…それホンマかいな?かずさ?」

りんは、またもや突拍子もなく現れたかずさのその言葉に、あんぐり口を開けて、わかりやすく驚いてみせた。

「だから、使教徒同士、いがみ合っても仕方ないでしょう。」

かずさがそう言って、月斗と星羅の間に入った所で、それは全く意味がない。
月斗は、やっぱり今日もその姿を見るなり、かずさを思いっきり睨んでいた。

「やっぱりなー。星羅は何か違うと思ってたんや。わいらと同じ使教徒だったんか。」

りんは驚きの表情から一変して、またいつものニコニコの笑顔に戻っていた。

「…もしかして、あなたも使教徒?」

かずさの事は、なんとなくわかっていたものの、まさかりんも使教徒だと聞いて、星羅は怪訝な表情を浮かべる。
やはり、りんにはどこか他の人とは違う何かを感じていたのは、間違いではなかったようだ。

「そうや。わいと、コイツ月斗と、かずさ。って、本当に使教徒集まってきてるやないか!」
「彼も…?」

まさか、あのお尋ね者の月斗までも使教徒だなんて。いよいよ星羅は、信じられないという目で、月斗をチラッと見た。
< 222 / 339 >

この作品をシェア

pagetop