私の中におっさん(魔王)がいる。~黒田の章~

 * * *

 功歩軍、夜襲の見回りをしていたシユウは、思わぬ援軍に浮き足立っていた。
 今なら、夜襲が来たとしても恐ろしくはない。
 そんな自信を持っていた。

 暗闇が広がる大地に視線を移す。その先に、小さな明かりがちらほらと見える。あれは美章軍の陣営のものだ。

 シユウは、ふふんっと胸を張った。
 今日の借りを返してやる! シユウがそう、にんまりと笑んだときだ。暗闇の向こうから、ガラガラと小さな音が響いた気がした。

 シユウはぎょっとする。
 夜襲が来ても恐ろしくないとは、思ったものの、実際にそうかも知れないと思うと、急に恐ろしくなった。
 カンテラを前方にかざす。

「だ、誰だっ!」

 闇の向こうからは、なんの返答もない。
 気のせいだろうか……?

 シユウはほっと息をつきかけて、また目を見開いた。
 やはり、気のせいではない。
 暗闇の向こうで、何か物を牽く音がする。

「誰だ!?」

 シユウは、今度はもっと大きな声で叫んだ。
 カンテラを乱暴に前方へ押し出すと、闇を丸く切り取った中に片足が踏み込んできた。

 一瞬ぎょっとしたが、それがすぐに自分の軍の鎧であると悟ると、小さく息をついた。だが、明かりの中に荷台が映し出された時、シユウは思わず悲鳴を上げた。
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