私の中におっさん(魔王)がいる。~黒田の章~
第四章・思わぬ再会
 それから一週間が経った。
 今日は何故か珍しくいつもより早く起きてしまったので、いつもより早く家を出た。朝の町を歩くのは初めてだった。
 夕方と違い、忙しそうに早足で歩く人が多い。
(多分出勤だろうな)
 そういえば、凛章ではドラゴンはあまり見かけない。
 ラングルを見かけたことはないに等しい。っていうか、ない。でもたまに、高級車っぽいのが通る。

 荷台が漆黒で、中世の貴族が乗っていたような馬車に似てる。ていうか、そっくり。それを引いているのが馬じゃないというだけで。
 それを引いているのは二羽のドラゴンで、ダチョウに似ている。鶏のような鶏冠がついていて、羽に赤い線が入っている。

 街中で見かけるのはそれくらいだった。
 やっぱりラングルは、軍事用のドラゴンなんだろうか。
 ふと、白矢や、クロちゃんのラングルが気になった。

(ドラゴン達も無事だと良いけど……)

 あれこれと思案しているうちに、図書館についてしまった。
 中に入ろうとすると、営業時間外の文字が飛び込んでくる。

(深く考えずに着ちゃったけど、そういえば営業時間ってあるんだよね……。失敗したなぁ……)

 営業時間は九時からだった。
 事前にクロちゃんから貰っていたウロガンドを、ポケットから取り出す。残り四十分ある。

「どうしようかなぁ……」

 独り言を呟きながら、歩き出した。

「しょうがない。町でも見て歩こう」

 この時間では、営業しているところも少ないだろうけど、散策してみる価値はあるもんね。
 私は意気込みつつ、来た道を下った。
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