私の中におっさん(魔王)がいる。~黒田の章~
「……っていうかさぁ……お前、なんなわけ?」
「へ?」
「前から気になってんだけど。なんで、ゆりちゃんって呼んでんの? 相手一応、魔王なんだからさ。敬称使うだろ普通」
「……」
あ~あ……なるほど。
「嫉妬っすか?」
「はあ!?」
隊長は声を荒げて、フードを引っ張った。
図星だ。
「――バッカじゃないの!?」
思い切り睨んで、俺を小バカにする素振りをしたけど、これは、ビンゴだな。
「なんだぁ……だったら、隊長も呼べば良いのに。今なんて呼んでんでしたっけ?」
「……別にどうでもいいだろ」
隊長は急にトーンを落として、冷たく呟く。
う~ん……ちょっと、機嫌損ねすぎちゃったかな。こりゃ。
「でも、大事にしてたペンダントあげるくらい気にはなってんでしょ?」
「……うるさいよ」
隊長は心を閉ざしたように、冷淡に呟く。
こうなっては、もうダメだ。
今なにを言っても、隊長は聞く耳を持たない。
隊長はいまだに、自分の心のテリトリーに入られるのを極端に嫌う。
前に比べれば、許してくれるようにはなったけど、一種の防衛本能なのかもな。
「……は~い!」
俺はわざと明るく返事をした。
(ところで、読んでいる巻物はなんだろう?)
こっそりと窺い見ると、隊長にギロリと睨まれた。
にやりと、苦笑を返すと、隊長は観念したようなため息を吐いた。
呆れた表情をしながら、読んでいた巻物を俺に手渡す。
隊長は結局、面倒見がいい。
押しに弱いとも言えるけど。
俺は、巻物に目を通した。
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拝啓、黒曜竜(オブシディアン)様。
先日の件、大変ありがとうございました。
花小竜(ブルーメ)とも無事に合流を果たし、只今例の物を調べている最中にございます。
過程にはなりますが、礼の物はどうやら偽者のようでございました。
何か分かり次第、追って連絡差し上げます。
月の鳥。
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