私の中におっさん(魔王)がいる。~風間の章~

 * * *


 賑わう町で、二つ部屋が開いていたのはラッキーだった。
 従業員の中年の女性が簡易風呂を運んできてくれたので、それに浸かる。
 着替えたところで、トントンと、ノック音が響いた。

「風間です」

(なんだろう?)
 戸を開けると、優しい笑みを浮かべる風間さんが立っていた。

「どうしました?」
「今日は時間があるので、街を見て廻りませんか?」

 街か。
 そういえばいつも食事と寝るだけで、街を見て廻るなんてしたことなかったな。

「良いですね。行きましょう」

 そう返事を返して、ふと気づく。
(これって、デート?)

 頭を横に振る。
 そんなわけないと否定しつつ、心が躍るのを感じた。
 人間って現金だな。
< 40 / 108 >

この作品をシェア

pagetop