御坂くん、溺愛しないで。
*
けれどそういう時に限って不運は重なるもので。
「えー、この問題を解説してから終わりましょう」
もうすでに四限目の授業を終えるチャイムは鳴ったというのに、数学の先生はまだ問題の解説をしようとしている。
クラスのみんな、『まだやるのか』という空気になっているけれど、それを無視して解説を始める先生。
なんで、早く終わってくれないと御坂くんが来てしまう。
もうすでに机の上にはボーダー柄のランチバックと水筒を準備しているというのに、先生の授業は終わらない。
結局五分もオーバーして授業が終わり、私は琴葉に捕まる前に教室を後にしたけれど───
「木原先輩」
「……っ」
ドアを出てすぐ、御坂くんが立っていたものだから思わず立ち止まった。