御坂くん、溺愛しないで。
そんな彼を見て、思わず頬が緩みそうになっていると───
「待って今の理玖くん見た!?」
「やばいやばい、超かっこよかったよ!」
突然近くで女の子が騒いだため、ビクッと肩を跳ねながらも声をしたほうに視線を向ける。
するとふたり組の女の子たちが私服姿でバスケ部を見ており、御坂くんを見て騒いでいる様子。
「理玖くんの試合姿見れてラッキーだね!」
「せっかくだし写真撮って本人にあげようよ。連絡先知るチャンスじゃん!」
モヤっとした。
“理玖くん”という呼び方に。
その後の言葉にだって。
御坂くんに片想いな私には関係のないことだというのに。
「同じクラスなのに理玖くんと中々話せないから、まさにこういうのってチャンスだよね」
「それそれ。普段は近づきにくいオーラ放ってるけど、理玖くんって超優しいんだよ!?
この間だって筆箱落としたんだけど、すぐ屈んで拾ってくれてさ…」
「私も日直同じだったんだけど……」
嫌だ、聞きたくない。
その気持ちが全面的に出てしまう。
慌てて視線を御坂くんに戻して、また観戦しようとするけれど。
モヤモヤは胸に残ったまま。