御坂くん、溺愛しないで。



聞こえてくる話の限り、女の子たちは御坂くんと同じクラス。

つまり普段から私の知らない御坂くんを知っている。


「男女関係なく、先生にも優しいからね御坂くん」
「それだよそれ!先生もメロメロになっちゃうよねぇ」


そんなの知っている。
御坂くんがどこまでも優しい人ってくらい。

けれど、心のどこかで私は期待していたのかもしれない。


御坂くんの優しさは私にだけの“特別なもの”だって。

当たり前だけれど違った。
御坂くんはみんなに優しい。


男女問わず、先生までもメロメロにさせる御坂くん。


苦しい。
胸がズキズキと痛む。


「ほら咲!
理玖に観に来てほしいって頼まれたんでしょ!?」

「……うん、そう」
「だったら観てあげないと!理玖に集中すればいいの」


琴葉も先ほどの女の子たちの会話が聞こえたのか、声をかけてくれる。

けれど苦しい気持ちは収まらない。


女の子たちも、御坂くんが誘ったかもしれない。
そう考えたらより一層苦しさが増した。

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