御坂くん、溺愛しないで。
「はいはい、勝手に誤解しとけばいいよ。
で、もう元気出た?」
「……出た」
「嘘つけ、バカ咲」
バカってひどい…バカなのはわかっているけれど。
余計に落ち込んでしまいそうになる。
「ほら片付け終わったよ咲…」
「琴葉!」
その時、ギャラリーの下から筧くんの声が聞こえた気がした。
私と琴葉が体育館のフロアに視線を向けると、私たちのちょうど真下に筧くんの姿があった。
琴葉を見るなりにこにこ笑っている。
「どうしたの?」
絶対に今、琴葉は緊張してる。
平静を装っているつもりかもしれないけれど、声が少し震えていた。
「まだ監督が他校の監督と話しているから、ミーティングは後になったんだ。
だから帰るの遅くなるかもしれねぇ」
「え、そうなの?」
「ああ。それで…木原ちゃん」
「は、はい!」
まさかここで名前を呼ばれるとは思っておらず、声が上ずってしまう。