御坂くん、溺愛しないで。



「私も御坂くんと話がしたい」

ゆっくりと御坂くんを見上げれば、あまりにも彼が真剣な表情で私を見つめていて。


自然と鼓動が速まるのがわかった。



「じゃあ決まりで。
早速公園に行きましょ…」


「───理玖?」



それは突然だった。

まだ御坂くんが話している途中に、少し離れたところから彼の名前を呼ぶ声がしたのは。


私だけでなく御坂くんもほぼ同時に顔を上げる。


すると私たちの向かい側から、ひとりの男の人がこちらへ歩いてくるのがわかった。


「……真司(しんじ)」

御坂くんも少し掠れた声で相手の男の人の名前を呼ぶ。



「やっぱり理玖じゃん!
久しぶりだなあ、元気にしてたか?」

やけに親しそうに話す“真司くん”に、どこか見覚えがあった。


この辺りで遭遇するということは、元同中だろうか。


「まあ、ある程度は」

「なんだその微妙な反応!理玖、すげぇかわいい女を連れてんじゃん!彼女だろ?なんだ元気にしてんじゃん理玖!」


なぜだろう。

真司くんは普通に話しているかもしれないけれど、御坂くんをバカにしているように見えてしまうのは。

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