恋の駆け引き~イケメンDr.は新人秘書を手放せない~
夕方の秘書課ミーティング。

「では、各自申し送り事項をお願いします」
司会の声で、それぞれ発言していく。

「院長先生は来月末から長期不在が続きりますので、スケジュールの確認をお願いします」
「「はい」」

「外科部長は学会出席のため、外来の担当日が変わります」
「「はい」」

「副院長は、内科の田中先生が産休に入られる関係で、外来の担当日が増える予定です」
「えー、真之介先生外来が増えて大丈夫なの?」
はあ?

「並木さん、今でさえ真之介先生の外来日が多いのに、これ以上増やしてどうするのよ。副院長としての仕事もあるんだから、秘書が調整してあげないと、体を壊してしまうわ」
「そうよ」
ええ?

「真之介先生、かわいそう」
先輩達が口々に非難を始めた。

マズイかも・・・
こんな時課長がいてくれれば、みんなもここまで言わないんだろうけれど、今日は出張で不在。

今の私には頼る人がいない。
困った。

「大体、並木さん。あなたの服装もなんとかならない?」
一番うるさいお局様が、口にした。

「服装ですか?」
「そうよ。あなたには季節感って物がないのかしら。秘書は人の目につく部署ですからね、最低限のTPOはわきまえてもらわないと」
確かに、火事で服をかなりなくしてしまったから、残った服を着回している状態だった。
自分でも、夏のボーナスが出たら服を買いたそうと思っていたんだけれど・・・これは言い訳でしかない。

「すみません」
頭を下げるしかなかった。

「聞くところによると、他の先生の書類作成までやってるらしいけれど、やり過ぎは嫌みよ。チームワークを乱すような行動は慎んでちょうだい」
「はい」

悔しい。
けれど、言い返せばもめるだけ。
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