恋の駆け引き~イケメンDr.は新人秘書を手放せない~
「ありがとうございました」
色々と言いたいことはあるけれど、ボスが私を気遣ってくれたことは伝わってきて素直にお礼を言った。

きっと、ミーティングで私が言われたことを聞いていたに違いない。

「お前、もっとはっきりと自分の意見を言うべきだと思うぞ」
確かに、先輩達にあんな態度を取らせてしまうのは自分にも問題があるんだと思う。
分ってはいる。
でも、この性格はどうにもできない。

「たまには外で食って帰るか?」
「いえ、カレーがあります」
「ああ、そうだったな」

それに、内緒で用意している物もあるから今日は家で食事をしたい。

「あの、副院長」
「なんだ?」
「お洋服のお金はすぐには返せません」
「バカ。あれは、残業代だ」
何を言っているんだと呆れ顔。
「残業代、ですか?」
「ああ。家でやっている仕事に給料が発生していないだろう。その分だ」
でも、それをボスが払うのはおかしい。

「いいから、黙ってもらっておけ。お前はいい秘書だ。やめられたら困るんだよ」

ボス。
時々見せるボスの優しさに、私は戸惑っている。
だんだんとボスに対する警戒心がなくなってきてもいる。
ダメだ。この生活に慣れてはダメだ。
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