独占欲強めな弁護士は甘く絡めとる
「あ、冨永さん。おつかれ」
広いシャツの胸から顔を上げると、穏やかな笑みが目に入る。
「香坂先生、まだ残られてたんですね」
「ああ、もう帰るけどね」
そう言って私を見下ろす彼の表情はニコニコ、いやニヤニヤしている。
いたたまれなくなり、私はやけ気味に言い放った。
「もう、言いたいことがあるなら言ってください!」
今日は一日中、パラリーガルの島を通りかかるたびにニヤニヤと笑いかけられて、こちらとしては気が気じゃなかった。さすがにほかの所員に言いふらすという子供じみたことはしないはずだけど、不自然なまでの笑顔がかえって怖い。
「別にないよ、言いたいことなんて。ただ、昨日はいいものが見れたなと思っただけで」
言いながら香坂先生は整った顔をいたずらっぽく崩す。