独占欲強めな弁護士は甘く絡めとる

 だけど他の先生や自分より長くこの事務所に勤めている人間に対しては、相手が年下でも事務員でも敬称を忘れない。実際、彼より一年早く在籍していた年下の私のことも、『さん付け』で呼ぶ。

 そう考えた瞬間、脳に彼の声が響いた。

『おはよう、優梨子』

 心拍数が跳ね上がる。

 見る目の厳しい長澤さんから観賞用と評された美しい顔の下、均整の取れたむき出しの上半身が視界をちらつく。

 あのとき同じベッドで寝ていた彼は、私の名前を呼んで、キスをしようとした。

 朝の情景がいきなり思い出されて、胸の鼓動がばかみたいに大きくなる。

 お……落ち着こう、私。

< 22 / 181 >

この作品をシェア

pagetop