独占欲強めな弁護士は甘く絡めとる

「あの夜、冨永さん、言ってくれただろ」

『好きな人の傍にいたいと思うのは、当たり前のことですよ』

 私の記憶から抜け落ちている私のセリフを口にして、目の前の弁護士先生は気恥ずかしそうに目を逸らした。

「まあ、好きっていうか、手が届かない人って感じだけどな」

『なつかない美人猫』の見たこともない照れた顔と聞き覚えのない言葉に、がつんと頭を殴りつけられた気がした。思い浮かんだのは、メガネをかけた鋼鉄の所長秘書だ。

「手が、届かない人……」

『蒼王子、所長室に来るとしょっちゅう麗香さんのことを見つめてますよ。それはそれは真剣な顔で』

 いつかのランチ時にそう言っていた雪絵の顔が脳裏をよぎる。胸の奥で、心臓が心もとないリズムを刻んでいる。

< 69 / 181 >

この作品をシェア

pagetop