一夜からはじまる恋
樹の言葉に湊が黙る。
「ごめんなさい。生意気なことを言いすぎました。」
「いや。うれしい」
「?」
「うれしかった。本当に。俺が一番、今欲しかった言葉だったって気づいた。」
「え?」
湊は樹に微笑んだ。

「現実から逃げたくて医者になって、でも現実と向き合わなくちゃならない状況になって覚悟決めて戻ってきたんだ。どこかで自分自身をしまい込まないとならない。社長として今までの自分じゃいけない気がしてた。」
「私にはその覚悟が分かりません。ここでわかるって言ったらなんだか、今までの社長の葛藤とか苦労を簡単なことみたいに言ってしまうようで。でも、私はどちらの高瀬湊さんにも人を惹きつける魅力があると思いますよ?」
「ありがとう」
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