一夜からはじまる恋
何かを考える樹の手を湊がそっと握った。
「きれいだな」
「うん」
湊の方を見ると湊も正面を見ていた。

陽が当たる湊の顔がまぶしく見える。
私はこの人を幸せにできるのだろうか。

そんなことを考えながら神聖な場所で陸が見守っているように感じた。

「湊さん」
「ん?」
「なんでもない」
そう言って微笑む樹は湊からまっすぐ正面に視線を移す。
その顔は久しぶりに穏やかで心から微笑んでいるように湊には見えた。
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