一夜からはじまる恋
「でも結婚式をやりたくないわけじゃないの。」
「うん。わかってるよ。」
「結婚式やりたい。湊さんと。でも、私がダメなの。」
「ダメじゃない」
「うまくできない・・・」
樹は顔をゆがめて泣き出した。

湊は樹の涙を拭いながら背中をさする。
「陸を忘れたくない。でも、思い出すとつらい。こんなじゃ湊さんに申し訳ない。」
樹の言葉に湊は
「樹」
と樹の名前を呼んだ。その顔はとても穏やかな顔をしている。
樹がそんな湊を見ると湊は優しく微笑んだ。
「速見さんがあっての樹だろ?もしかしたら速見さんがいなかったら俺たち出会わなかったかもしれない。」
「・・・」
「樹を過去も未来も全部包み込むって話した言葉に嘘はないよ?俺は樹の過去だって大事だ。」
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