一夜からはじまる恋
「・・・」
「結婚式の準備が進むにつれて樹の表情が心配でさ。俺不安だったんだ。俺との結婚式したくないんじゃないかって。倉本さんじゃないけどさ、二人のための結婚式なのに俺の家のせいで縛りも多いし。余計につらいだろうなって」
湊の言葉に樹は首を横に振る。
「でも俺との結婚で前に進みたいっていう言葉聞けてうれしかった。」
「・・・」
「速見さんを思い出して当然だろ?それは仕方ない。速見さんの時実現できなかったことを実現したっていい。同じことがつらいなら変えればいい。それは樹の心に任せる。」
「でも・・・」
「俺は樹のドレスさえ決められればそれで満足だよ。あとは隣に樹がいてくれたらそれでいい。」
自分もそうだ。湊が隣にいてくれたらそれでいい。招待客も、招待状や披露宴のデザインもプログラムも会長の言った通りでもよかったのは湊がいればそれでいいからだ。中身よりも、誰とというほうが重要だと思っていたからだ。
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