一夜からはじまる恋
「樹」
「ん?」
「子供の名前なんだけどさ」
「うん」
湊が何かを話したくて植物園に来ていることは樹にも察しがついていた。
「樹に決めてほしい」
「え?」
「どんな名前でも俺はこの子を愛する自信があるからさ。」
湊の言葉にしていないことも樹にはわかった。湊は生まれる子に陸と名付けることを言っているんだ。樹がいつの日かこの子が陸の生まれ変わりのような気がしていると話したことがあった。もしかしたらその時から湊はそう思っていたのかもしれない。
「私は湊さんに決めてほしい」
「え?」
「私、この子に陸って名前は付けないよ?」
樹の言葉に湊が驚いたように樹を見る。
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