一夜からはじまる恋
「この子は湊さんと私の子でしょ?陸の名前は付けない。」
「でも、大切な名前だろ?」
「同じ名前を付けてもこの子が陸の生まれ変わりとは思わないから。」
「・・・」
湊は心のどこかで自分と樹の子供に陸と名付けることで陸の魂がよみがえるような気がしていた。樹は湊の手を握った。
「湊さんがあの夜救われたって言ってくれたでしょ?私も同じ。あの夜湊さんに出会って私は救われた。言葉ではうまく説明できないけど、あの夜、もう湊さんは私をまるごと包んでくれてた。あんなに心満たされた時間は初めてだった。自然と涙が流れるくらいあったかくて満たされたの。」
「樹・・・」
「湊さんがいなかったら私はずっと過去にいてまえに進めなかった。立ち直ろうともせず自分の人生諦めてた。きっと。」
樹はまっすぐに湊を見つめる。
「ありがとう。」
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