偽恋人からはじまる本気恋愛!~甘美な罠に溺れて~
今年、五十三になる叔父はダンディなマスターとして雑誌に載るくらい、健康的な浅黒い肌に目鼻立ちのはっきりとした彫りの深い顔立ちで、若い頃は南米やらヨーロッパなどを放浪していたこともあり、海外の知識も豊富な行動派。そんなワイルドな叔父はいまだに独身だ。
それにしても美味しそうないい匂い。ランチは少な目だったからお腹すいたな……。
今にもぐぅ、と鳴りだしそうなお腹を押さえ、私は集中!と大きく深呼吸してからピアノの前に座った。すると、私の演奏を待っていてくれたお客さんたちの視線が一斉に集まる。
ピアノを弾いている間は嫌なことを忘れられた。私も母のようなピアニストになりたいという夢を抱いていた時期もあったけれど、結局、私は母のようにはなれなかった。中学の頃、才能がないとわかると、母に『自分の好きなことをしなさい』と見限られ、今に至るといった感じだ。
コンサートなどで世界中を飛び回っていた母は自由奔放な人で、家事や子育てなんてそっちのけ、美人だけどクセが悪くて浮気なんてしょっちゅうだった。だから父と顔を合わせてはいつも喧嘩ばかりしていた。そんな両親が離婚したのは私が小学五年生の時。
それにしても美味しそうないい匂い。ランチは少な目だったからお腹すいたな……。
今にもぐぅ、と鳴りだしそうなお腹を押さえ、私は集中!と大きく深呼吸してからピアノの前に座った。すると、私の演奏を待っていてくれたお客さんたちの視線が一斉に集まる。
ピアノを弾いている間は嫌なことを忘れられた。私も母のようなピアニストになりたいという夢を抱いていた時期もあったけれど、結局、私は母のようにはなれなかった。中学の頃、才能がないとわかると、母に『自分の好きなことをしなさい』と見限られ、今に至るといった感じだ。
コンサートなどで世界中を飛び回っていた母は自由奔放な人で、家事や子育てなんてそっちのけ、美人だけどクセが悪くて浮気なんてしょっちゅうだった。だから父と顔を合わせてはいつも喧嘩ばかりしていた。そんな両親が離婚したのは私が小学五年生の時。