【番外編 完】愛を知らない彼
何も考えられなかった。
康介さんと話をしないと、とは思っても怖くてできない。
親しげに〝康介〟と呼び、電話で話す園田さんを見ていたら、本当のことなんじゃないかと思えた。

康介さんの私を見つめる優しい目、たまに見せる甘えた一面は、本当に母性を求めたものだったのかもしれない。
そもそも、康介さんが私を知ったのは、幼稚園で子ども達と遊んでいた時のことだった。
それだって、先生としてはもちろん、子ども好きな私にしたら母性もあっただろう。
信じたくないけど、園田さんの指にはめられた婚約指輪を思い出すと、身を引かざるを得ないと思った。

マンションに戻ると、私は急いで自分の荷物をまとめて飛び出した。
向かったのは、2駅先の弟の家。
康介さんと付き合うようになったと報告して以来、あまり会えてなかったから、突然の訪問に驚いていた。

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