サヨナラのために


「ごめん、美羽ちゃん、遅えよみたいな感じできた!?」


この人は私をなんだと思ってるんだろう。


「違いますよ。…看板、いろいろあって無しになっちゃって。だから、もう大丈夫です。たくさん手伝ってもらったのに、こんなことになってごめんなさい」


私は先輩に頭を下げる。


本当に、申し訳なかったから。


「いやいや、謝んないでよ、勝手にやってただけだし。でもそれは、美羽ちゃんが残念だったね」


ポンポン、と優しく頭を撫でられ、私は曖昧に笑う。


こういうとき、どんな表情をしたらいいのか。


私の心の中は案外落ち着いてて、ショックとかも、あんまりなくて。


それが逆に、困る。


もっと、泣けたりしたらいいんだけど。

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