サヨナラのために


放課後、ホームルームが終わってすぐに私は教室を出た。


階段を上がって、三年生の教室のある廊下に足を踏み入れる。


違う学年の廊下というだけで、どうしてこんなにも居心地が悪くなるんだろう。


先輩が何組かも知らないことに、今更ながら気づく。


仕方なく、1組から順番に、控えめに顔を覗かせて中を確認した。


3組にきて、ようやく先輩の姿を見つけて、ほっとする。


「あ、の」


「ん?」


ドアの近くにいる男の先輩に、恐る恐る声をかける。


「孝宏先輩、呼んでもらってもいいですか」


「ああ、孝宏ー、後輩!」


「美羽ちゃん!?」


相当驚いたのか、振り向いて私の顔を見るなり素っ頓狂な声を上げる。


その声に、なんだそれー、とクラスの女子と男子数人が笑った。


先輩は、どこでもあたたかい。

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