サヨナラのために


渡り廊下に出て、校舎を見上げる。


「う、そ…」


私は思わず口元を押さえた。


校舎のど真ん中。一番目立つ場所。


なかったことになったはずの、私の描いた看板が、そこにはかかっていた。


「なんで…」


真っ青な空をバックに、黒髪の制服を着た女の子が、背中に翼を生やして、微笑んでる。


キラキラとまぶせられたスパンコールが、太陽に反射してキラキラと光る。


スパンコールなんて、私やってない。


誰が、やったの?


「これ、先輩が…?」


「ポスターは手伝ったけど、まさかこんなに目立つとこに飾られるとは思わなかったよー!一昨日、突然誠也くんが来て、一緒に完成してほしいって言われてさ…」


誠也が?


声が出ない。


足から力が抜けて、その場にへたり込む。


せいや。


誠也。


会いたいよ、


「っ…せいや…」


「なに、美羽」


ギュッと、あたたかい温度が私を包む。


体が、心が、震える。


熱い涙が、自然と、目からこぼれる。


今日はちゃんとわかる。


私、嬉しいんだ。



涙が出るほど、嬉しいんだ。


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