サヨナラのために


文化祭当日。


開会式を終えて、学校が開かれ、来場客で校内がごった返す。


気合の入った装飾に、クラスや部活の出し物。


ライブや、クイズ大会、ミスコンなどで盛り上がる野外ステージ。


そんな喧騒を遠くに聞きながら、私は関係者以外立ち入り禁止の最上階にある資料室にいた。


教室に行っても私の仕事はないし、一緒にいる人もいないし。


ここが空いててよかった。


あたたかくて、気持ちいい。


このまま、文化祭が終わればいい。









どれくらい経っただろう、ポケットの携帯の振動で、うとうとしていた意識が引き戻される。


ディスプレイに表示されていたのは、「斎藤孝宏」の文字。


「もしもし、先輩?」


「美羽ちゃん、外!すごいよ!見た!?」


「なんですか、見てないですけど…」


「早く、看板が…」


…嘘だ。



そんな、嘘だ。


心臓が、バクバクとすごい音で鳴りだす。


もつれる足で、資料室を飛び出す。

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