極上蜜夜~一夜の過ちから始める契約結婚~
「キツいようですが、言わせていただきます。あなたの行動は、あまりにも無防備で、愚かだ」


彼はお腹の底から溜め息をつき、その薄い唇をそういう形に動かした。


「……えっ」


短く聞き返して瞬きをする私の前で、書類をテーブルに置く。


「海外旅行に出る前に、外務省のホームページを見て下調べをしろとは言いません。ですが、ほら、それ。今のあなたの唯一の所持品、ガイドブック。それにもちゃんと書いてあることです」


筋張った長い指で示されたガイドブックに、私は導かれるように視線を落とす。


「ローマは近隣諸国からの移民が多く、あなたを襲ったような子供のスリ集団は日常的に横行しています。百歩譲って知らなかったとしても、パスポートの現物と有り金全部一緒に持ち歩くのは非常識です。ただでさえ、金持ち日本人はどこに行っても格好の餌なんですよ」


もう一つ溜め息をお見舞いされて、私は肩も首も縮めた。


「海外に来ると、なぜか、日本の女性は呑気で無防備で開放的になる。それ故、日本人女性を巻き込んだ犯罪が絶えない。一人旅なら、なおさらです。痛い目見たくなければ、もっと危機感を持って……」

「すっ……すみません! 反省してます!!」


なにもかも、仰る通り。
恥ずかしさとあまりの居た堪れなさに、カアッと頬を火照らせた。
両手を膝について、肩を怒らせる。
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