極上蜜夜~一夜の過ちから始める契約結婚~
「パスポート、再発行急がせます。そうですね……明後日にはご用意できると思いますので、またこのくらいの時間にお出でください」
そう言って、きびきびと背を向ける彼を。
「ま、待ってください!」
私は、無意識に腰を浮かして呼び止めていた。
片手をスラックスのポケットに突っ込んだ彼が、肩越しに振り返る。
「また、ローマに来ます。それで、お金必ずお返しします。だから、お名前……あなたのお名前を教えてもらえませんか」
胸の前で両手をぎゅっと握りしめ、そう告げる。
彼は無言のまま、一歩足を引くようにして身体ごと私に向き直ると、ふっと口角を上げた。
「成瀬、といいます。成瀬、柊甫」
「成瀬、さん」
彼の言葉を拾って、私もその名を自分の口で繰り返す。
「ですが、あなたがいつまたローマに来れるかわかりませんし、私もいつまでローマ駐在か不明なので。同情の餞別、とでも受け取っていただければ結構です」
「っ……」
「では」
『同情』と言われて、傷ついた。
だけど、彼は言葉に詰まる私からふいっと視線を外して、再び背を向けてしまう。
大理石の床をカツカツと打つ、革靴の踵の音が遠ざかっていく。
それを聞いているうちに、私は居ても立ってもいられなくなり……。
そう言って、きびきびと背を向ける彼を。
「ま、待ってください!」
私は、無意識に腰を浮かして呼び止めていた。
片手をスラックスのポケットに突っ込んだ彼が、肩越しに振り返る。
「また、ローマに来ます。それで、お金必ずお返しします。だから、お名前……あなたのお名前を教えてもらえませんか」
胸の前で両手をぎゅっと握りしめ、そう告げる。
彼は無言のまま、一歩足を引くようにして身体ごと私に向き直ると、ふっと口角を上げた。
「成瀬、といいます。成瀬、柊甫」
「成瀬、さん」
彼の言葉を拾って、私もその名を自分の口で繰り返す。
「ですが、あなたがいつまたローマに来れるかわかりませんし、私もいつまでローマ駐在か不明なので。同情の餞別、とでも受け取っていただければ結構です」
「っ……」
「では」
『同情』と言われて、傷ついた。
だけど、彼は言葉に詰まる私からふいっと視線を外して、再び背を向けてしまう。
大理石の床をカツカツと打つ、革靴の踵の音が遠ざかっていく。
それを聞いているうちに、私は居ても立ってもいられなくなり……。