極上蜜夜~一夜の過ちから始める契約結婚~
大きく見開いた目で見上げると、彼はすっきりとセットした前髪に指を通し、くしゃっと握りしめた。


「私、ここに来て五年、男の一人暮らしでしてね。夕食は一人で外食することが多い。せっかくだから、ご一緒に……と思ったんですが」

「ゆ、夕食……?」

「ええ。あなたも一人旅なら、お一人でしょう? ……違いましたか?」


成瀬さんが、小首を傾げてそう続ける。


「い、いえいえ! そうです。私も、一人……」


『今夜のご予定』なんて言い方するから、デートのお誘いじゃないかなんて、勘違いしてしまった。
それでドキッとして勝手に警戒しかけたなんて、自意識過剰で恥ずかしい。


頭からしゅーっと蒸気が出そうなほど顔を真っ赤に染め、しどろもどろになって俯く私を、彼はふっと口角を上げ、目を細めて笑った。


「では、六時にまたここに来てください」


彼が向けた探るような瞳に、なにか妙な色っぽさを感じて、私の胸がドキッと跳ねた。
春馬さんは、こういう目で私を見たことはなかった。
だから、私は、自分がなにに胸を弾ませたのかわからず……。


「は、はい」


成瀬さんに返事をした後、どこか覚束ない気分で宙に目線を彷徨わせた。
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