極上蜜夜~一夜の過ちから始める契約結婚~
「日本でもそうなんですが、一人で外食するの、ちょっと苦手で」

「やっぱり、一人旅向きじゃないな。君は」


成瀬さんがどこか揶揄するように言うのを聞いて、ひょいと肩を竦める。


「ほんと、その通りです」


彼にはそう答えてから、私はそっと辺りを見回した。
大使館の周りは、閑静な住宅街といった印象で、リストランテやトラットリアがあるようには見えない。
私の思考を見透かしたのか、彼が「ああ」と頷いた。


「私、ここまで車なので。一度自宅に戻ってからでないと、せっかく女性とディナーだというのに、酒が飲めない。こんなところにご足労いただいて、申し訳なかった」


成瀬さんがふっと口角を上げるのを見て、私は思わずドキッとしてしまった。


「い、いえ。全然。私、気ままな一人旅ですから!」


胸の反応を誤魔化そうと、私は明るく声を張った。
それには彼も目を細める。


「一人旅を楽しんでるんだか、どうなんだか。わからないな、君は」


昼間より、やや砕けた口調。
からかうような意地悪な瞳も、またさっきまでと印象が違う。
またしても頬が火照りそうになって、私は無意識に手を当てて隠した。
そんな私を知ってか知らずか、成瀬さんは先導するように一歩前に出る。
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