極上蜜夜~一夜の過ちから始める契約結婚~
「私のアパルタメントは、ここから車で十五分ほどです。ワンブロックの場所に、なかなか美味いトラットリアがありますから、そこでどうです?」


肩越しに振り返り、私に意思を確認してくれる彼に、


「は、はい。ぜひ」


私は喜んで同意を告げた。
今日初めて会った外交官と、一緒に夕食。
私にとっては、完全なる非日常。
成瀬さんが言うように、私には絶対に不向きだけど、こういうのも一人旅の醍醐味なのかもしれない――。


私も、異国の地で開放的になってるんだろうか。
成瀬さんといると、気持ちが前向きになる自分に気付き、彼を見上げながら無意識に微笑んだ。
そんな笑顔が自然と浮かぶのも久しぶりだった。


駐車場から成瀬さんの車に乗り、彼が言った通り十五分ほどのドライブ。
彼のアパルタメントは、大使館の周辺とあまり雰囲気は変わらない、住宅街の一角にあった。
新しい近代的な建築物が少ないローマの街に溶け込むような、風情ある外観。
日本の『アパート』を想像すると、ローマのそれはすこぶる贅沢だ。


車を降り、ワンブロック歩いて到着したトラットリアは、もちろん、私が持っているガイドブックに載っているような、高級で有名なリストランテなんかとは全然違う。
石造りでこぢんまりとした、可愛らしい内装のこのお店の売りは、ローマの素朴な家庭料理だそうだ。
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