大嫌いな君と再会したら…
すると、店の前で遠藤君に呼び止められた。

「平井さん、僕、送ります」

「え?」

「僕、イケメンじゃないし、ずっと
平井さんを想ってます」

一瞬、何の事だか、分からなかったけれど、少し考えて、1時間も前に私が言った理想の男性像だと気づいた。

「え、あ、いえ、あの… 」

なんて答えよう。

「遠藤、悪い。
平井は俺が貰うから。
申し訳ないけど、諦めて」

会計を終えて出てきた楠さんがそう言って、突然、私の肩を抱いた。

同期の女子たちは、遠巻きに見てニヤニヤしている。

これ、来週、絶対、冷やかされる奴じゃん。

「分かりました。
お先に失礼します」

遠藤君は頭を下げると、何事もなかったかのように帰っていった。

あれ? ほんとに私のこと好きなの?
全然、失恋した感じがしないんだけど。

「じゃ、平井、帰ろうか」

「え?」

さっきのは遠藤君を諦めさせるための冗談でしょ?

「ほら、送ってやるから行くぞ」

え、でも…

楠さんは、戸惑う私の手を引いて歩き出そうとする。

すると、繋がれた右手を一磨が振り払うように解いた。

「岡田君?」

「うち、平井さんちと歩けるくらい近いん
です。
だから今日は俺が送ります」

一磨が手を振り解いた後、私と楠さんとの間に立ち塞がるように立ったので、私からは楠さんの様子が見えない。

「分かった。平井、岡田、お疲れ」

その声を合図に、みんな、わらわらと駅へ向かって歩き出す。

私たちも最後尾からついていった。
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