大嫌いな君と再会したら…
「あの、岡田くん? 手… 」

私はそう言って立ち止まるけれど、

「ハイヒールで転ぶと危ないですから」

と手を離してはくれない。

一磨はそのままスタスタと歩いていくので、私も仕方なくついていく。

「どっちですか?」

駅前の交差点で尋ねられ、大池方面を指差す。

この道を誰かと手を繋いで歩くなんて、元彼と別れて以来。

いや、正確には、多分2年振りくらい。

最後の方は、デートらしいデートもしてなかったし、一緒に出かけても手を繋ぐなんてした事なかった。

そりゃ、他の人好きになるよね。

そんな事を考えてると、一磨が口を開いた。

「平井さん、楠さんと付き合ってるん
ですか?」

「は!?」

なんでそうなるの?

「今日、とても仲が良さそうだったから」

「ないない!」

私は大きく手を振る。

「そう…なんですね。よかった」

ん?
よかった?
何が?
え?

酔った頭では正常な思考は望めず、疑問だけが浮かんでは消える。

アパートの前まで送ってもらうと、一磨は驚いたように言った。

「うちと近いんですね。
うち、あそこです」

一磨が指差したのは、低い建物が多いこの辺りで一棟だけ頭が飛び出している7〜8階建てのマンション。

距離にしておよそ500メートル。

ま、うちが二駅のほぼ中間なんだから、あり得ない話じゃない。

「あ、そうなんだ」

私は動揺を隠して答える。
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