身ごもり秘夜~俺様御曹司と極甘な政略結婚はじめます~
「ちょっと、何をしてるの。ほんとに落ち着きがないったら」
顔を真赤にしてせき込む琴音が、やはり可愛らしくてしょうがない。たとえ昔のように無条件に慕ってはくれなくても。
――変わってるようで、変わってない。
そのことが、やけに嬉しかった。
大人になって、そう無邪気に振舞うことができなくなるのは当然のことだ。簡単に人に頼ることができなくなることも。ならば、もう一度彼女が、閑が差し出した手に自分からその手を重ねてくるのを、待とうと思えた。
どれだけ時間がかかっても、ゆっくりとそうしていければいい。そう思えたことが自分には希少なことで、それが決意を固めた瞬間だったと言っていい。
恋だとか愛だとか、そういった感情を意識したことはあまりなかった。女性としてある程度好ましい相手なら、付き合うこともできた。男なんて大概そんなもんではないだろうか、と閑は思う。
だけど一生を共にする結婚ともなるとそれはまた話は別で、長い時間共にするなら自分にとってどういう存在が良いのだろうかと比較的冷静に考えた。
実際には、そんな冷静さなど欠片もなかった。必要に迫られた時に真っ先に頭に浮かんだ存在があって、それをそのまま口にした。いざ会ってみれば、それが間違いとも思えなくて、子供の頃にあれほど慕われていたのだからすぐに距離も縮まるだろうと思っていた。
ところが、そう思うように事は運ばない。主に、彼女の側の理由で。