身ごもり秘夜~俺様御曹司と極甘な政略結婚はじめます~
 琴音の母と会話をしている間、彼女はただ黙って俯いていた。それとなく様子を伺うも、視線は合わない。

「母は少し遅れるそうで。すみません、お待たせして」
「そうなの? 彼女とも会うのは久しぶりなのよ、楽しみだわ」

 しかし、琴音も決して無関心というわけではないことは、感じられた。ちらちらと閑の表情を窺っている琴音の表情を目の端で捉える。
 戸惑いから、何か閑の本意を探ろうとしているような、そんな表情に見えた。

 そんなに、自分との縁談は彼女にとって予想外で訝しいものだろうか。子供の頃に先にプロポーズをしてきたのは彼女の方だというのに。

 そう思えば、少し意地悪な気持ちにもなってくる。

「モテるでしょう? 本当にこの子でいいのかしら、心配になってきちゃったわ。この子ったら相変わらず洒落っ気もないし」

 相変わらず琴音を貶すその母親に、さらりとそんな言葉を向けたのは、決して嘘ではないのだが。

「そうですか? 俺は綺麗になったと思いましたけど」

 閑の言葉を聞いてか、紅茶のカップに口を付けたまま固まる琴音に、小さないたずら心が満たされる。
 怖々と顔を上げて、琴音と閑の視線が絡まったとき。

「げほっ……んんっ」

 盛大に紅茶を噴いた琴音に、閑は笑いを堪えきれずに肩を揺らした。

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