身ごもり秘夜~俺様御曹司と極甘な政略結婚はじめます~
◇◆◇◆◇


 何度も何度も、名前を呼ばれた。身体中、閑の唇が触れていないところなど、もうないのではと思うくらいに、隅々まで口づけられた。

 シーツに縋り付いた手を解かれ、閑の舌がべろりと舐める。
 どこに触れられても声を上げてしまうほど高められた身体は、それだけで自分の中にいる彼を締め付けていた。

 こんなにも熱い人だったのだろうか。情熱的に求められ琴音も無我夢中でそれに応えようと、遠ざかる意識を繋ぎとめた。

『閑ちゃん』
『琴音、可愛い……もっとだ』
『閑ちゃんっ……』

 最後は、気を失うようにして眠ったんじゃないだろうか。その辺りはもう、記憶が定かではない。

 そして今、琴音はベッドの中で昨夜の情事を思い出し、脳内にクエスチョンマークを飛び回らせていた。

 ――なんで?

 まさかこんなに、情熱的に求められるとは、夢にも思っていなかったのだ。

 ただ、そう。琴音もいい大人だ。男性の生理的な事情はそれなりに理解しているつもりだ。閑のことだから、琴音と結婚を決めてからはきっと誰ともそういうことをしていないから、つまりは欲求が溜まっていたということだろうか。

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