身ごもり秘夜~俺様御曹司と極甘な政略結婚はじめます~
「そういうの、余計に警戒される気がするんだけどな?」
「あら、そこはあんたがなんとかするところでしょう。じゃあね、琴音ちゃん」
そのまま去って行きそうな母親ふたりに、琴音は慌てて声を上げる。
「えっ、あの! でも、せっかくだしもう少し……!」
「あら私たちはお正月にたくさん喋ったでしょ」
確かに閑の母親とは数日前に会ったばかりだ。たくさん話もしたが、話の半分以上はこの結婚に関することばかりで、ゆっくり話せたという印象は琴音にはない。
跡取り息子が欲しい二宮家にとって、これまでまったく無関心だったらしい閑がようやく結婚に意識を向けた。この期を逃してはいけないとばかりに、怒涛の如く畳み掛けられたのだ。
「閑とは本当に久しぶりなんだから、せっかく《・・・・》だし、ゆっくり話してちょうだい」
ひらひらと手を振って母親たちは店を出ていき、本当に閑とふたりだけにされてしまった。
どうしよう。なんか、顔が見れない。
沈黙が気まずくて、何か喋らなければと焦りはするが言葉が見つからない。大体、十数年ぶりに会うというのにいきなり結婚前提の状況で、ふたりきりにされて会話が弾むものだろうか。それくらいならまったくの初対面の方が、まだやりやすい。見合いらしい額面通りの会話をすればいいのだろうから。
店の出入口に向けていた顔を戻し、視線はテーブル席の中央を見る。その目線を、ほんの少し前方へ進めれば、綺麗な形でデザートスプーンを持つ大きな手が見えた。
大きな、男の人の手だ。そう思ったとき「琴音」と名前を呼ばれて心臓が跳ねた。
「あ、はい!」
「ジェラートが溶け始めてる。とりあえず食べないか?」
しゃん、と背筋を伸ばした、どことなく不自然な琴音を、閑は小さく笑った。
「あら、そこはあんたがなんとかするところでしょう。じゃあね、琴音ちゃん」
そのまま去って行きそうな母親ふたりに、琴音は慌てて声を上げる。
「えっ、あの! でも、せっかくだしもう少し……!」
「あら私たちはお正月にたくさん喋ったでしょ」
確かに閑の母親とは数日前に会ったばかりだ。たくさん話もしたが、話の半分以上はこの結婚に関することばかりで、ゆっくり話せたという印象は琴音にはない。
跡取り息子が欲しい二宮家にとって、これまでまったく無関心だったらしい閑がようやく結婚に意識を向けた。この期を逃してはいけないとばかりに、怒涛の如く畳み掛けられたのだ。
「閑とは本当に久しぶりなんだから、せっかく《・・・・》だし、ゆっくり話してちょうだい」
ひらひらと手を振って母親たちは店を出ていき、本当に閑とふたりだけにされてしまった。
どうしよう。なんか、顔が見れない。
沈黙が気まずくて、何か喋らなければと焦りはするが言葉が見つからない。大体、十数年ぶりに会うというのにいきなり結婚前提の状況で、ふたりきりにされて会話が弾むものだろうか。それくらいならまったくの初対面の方が、まだやりやすい。見合いらしい額面通りの会話をすればいいのだろうから。
店の出入口に向けていた顔を戻し、視線はテーブル席の中央を見る。その目線を、ほんの少し前方へ進めれば、綺麗な形でデザートスプーンを持つ大きな手が見えた。
大きな、男の人の手だ。そう思ったとき「琴音」と名前を呼ばれて心臓が跳ねた。
「あ、はい!」
「ジェラートが溶け始めてる。とりあえず食べないか?」
しゃん、と背筋を伸ばした、どことなく不自然な琴音を、閑は小さく笑った。