身ごもり秘夜~俺様御曹司と極甘な政略結婚はじめます~
「緊張しすぎ。いきなり取って食ったりしないから心配しないで」
「あはは、うん。そんな心配はしてないけど」
気まずい時は笑って誤魔化せ。そんな風に意味なく笑って、目の前のジェラートを改めて見る。確かにとろりと溶けて更に広がり、ラズベリーの赤いソースと交わりはじめていて。琴音は、溶けたその部分からスプーンを入れた。
さて、何を話せばいいのだろう。何を聞けばいいのだろう。実のところ、琴音は両親たちの話を聞いても、閑が結婚を本当に承諾して今日ここに来るとは信じ切れずにいた。
だからここに来れば、閑が何か理由をつけてこの話をなかったことにするのじゃないかと思っていた。ところが、母親たちがいる前では彼はそんなことは何一つ言わず、ただ話を聞き流して、こうしてお膳立てされている。
「あ、あのね。閑……さん」
「ん?」
さっきはうっかり呼んでしまったが、子供の頃の愛称そのままなのはおかしいと敬称を改めた。緊張してうっかりスプーンで皿の表面を叩いてしまい、小さな音が鳴る。
「二宮と染谷の婚姻は、会社としてどうしても必要なの?」