身ごもり秘夜~俺様御曹司と極甘な政略結婚はじめます~

「ああ、それに、やっぱり夜遅くに琴音が出歩くのはやはり危ないと思うし」
「他の女性には欠片も思わないくせに。あなたの中では奥様は小さい頃と今とが同居してるんですかね?」

 そうなのかもしれない。友人と飲みに行くなど、大人の女性になったら当たり前のことなのに、琴音が、と思うと心配でしかたなくなってしまう。
 閑にとって、琴音はパートナーというよりどうしても庇護対象という認識の方が強くなる。

「昔と今のすり合わせでしょうか。そこらへんはまあ、奥様と話し合って好きにされればよろしいと思いますが……ちゃんと、話はされてるんですよね? 雑談ではなく、気持ちをですよ?」
「もちろんだ。言葉にも態度にも出してるつもりだ」

 妊娠がわかった時は、本当に夢なのかと思うくらいに驚いたが嬉しかった。琴音が、自分の子供を産んでくれる。最初、言葉も出ないほどに胸に込み上げるものがあった。

 何も言わない閑に、不安そうに琴音が瞳を揺らしてそれで我に返った。そこからは舞い上がって、嬉しい、ありがとう、と繰り返した自分は、狼狽えて決してスマートではなかったが。今思いだせば何度同じことを言うのかと呆れるくらいだ。

 ふむ、と津田が顎に手を当て、考え込む。

「妊娠中は何かと情緒不安定になりますが……大丈夫でしょうか」
「そうだな、気を付けてやらないと。安定期には入ったが、安心はできないしな。同性の話し相手でもいればいいんだが、友人とはほとんど疎遠らしいし、元職場の後輩くらいしかいない。姉とは……子供の頃ほど仲良くないみたいだしな」

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