身ごもり秘夜~俺様御曹司と極甘な政略結婚はじめます~
 プライベートの時間は、今は出来るだけ琴音とふたりの時間にとっておきたい。つわりはおさまってほっとしているが、先ほど津田も言っていたように、たまに情緒不安定になるのだ。

 感情の起伏が激しい。それは悪いことばかりでもないように思えるのだが、些細なことで泣きだしたりされると閑はうろたえてどうしたらいいのかわからなくなる。

 可乃子と仲違いしているというのが本当なら、話をして仲直りする機会を作ってやるのも琴音のためになるかもしれないが、琴音のその時の精神状態も少々気になる。

 可乃子と話をすることを琴音が望むかどうかにもよるし、会わせるにしてもふたりで会わせていいものかどうか。

 姉と会うだけなのに、そんな心配をする必要もないのかもしれないが……

 閑の頭に思い浮かぶのは、結婚前、染谷の家で可乃子と数年ぶりに再会した時のことだった。
 あの時は、子供の頃のように琴音が全力で閑に縋り付いてきたようで、それが可愛らしくて仕方がなかったのだが。あとから考えれば、、琴音の可乃子に対する態度が少しおかしかったような気がする。

 それは、仲違いしていると知った今となって思えば、という程度のことなのだが。
 閑のいないところで、可乃子と琴音を会わせることに漠然とした不安があった。

 閑は休日、もしくは仕事の都合が付きそうな平日の何日かをピックアップし、可乃子へメッセージを送っておく。向こうも仕事中だったのだろう、既読がついて通話着信が入ったのは、仕事が終わり家へと向かう車中のことだった。

< 199 / 239 >

この作品をシェア

pagetop