身ごもり秘夜~俺様御曹司と極甘な政略結婚はじめます~
エピローグ
【エピローグ】

 春の暖かい日差しの中で、色鮮やかな花々が咲き誇る日に、琴音は女の子を産んだ。臨月まで閑に毎日付き合ってもらい散歩をして、しっかり運動していたおかげだろうか。

 陣痛が始まってから約六時間という、短い時間で生まれてくれたおかげで、琴音の身体の回復も早かった。

 それでももちろん、陣痛は痛かったし悲鳴を上げたが。それを分娩室の外でずっと聞いていたらしい閑の方が、よほど憔悴していた。

 初めて見るほど弱った顔で、産着に包まれた娘を抱いていた閑を思い出し、琴音はくすりと笑った。手はベビーベッドの中にいる、娘のお腹に当てられている。

 真っ白いレースのベビードレスを着て、準備は万端だ。後は閑が来るのを待つばかり。こうして娘を眺めていれば、いつまでも待っていられる。そう思うほど、飽きない。
 小さなお腹が息で微かに上下していて、たまらなく柔らかくて温かい。時々、不器用な様子で手を動かす。くしゃりと顔を歪ませる。

 目元は、閑に似ているだろうか。まだよくわからないけれど、閑に似ていたらいいなと琴音は思う。その時、ノックの音が聞こえた。

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